映画『ドクター・スリープ』ラストシーンが作品の意味を180度変える!
名作『シャイニング』の続編と言う事で、かなり注目を集めましたが、今まで誰も深く語らなかった、あのラスト・シーンの意味を理解すると、実はこの作品の見方が大きく変わります。
『ドクター・スリープ』予告編
その後のダニー・トランス物語
こんな人にオススメ!
- 映画『シャイニング』の続編なら見たい
- 原作と映画の比較がしたい
- オーバールック・ホテルのその後が知りたい
どんな映画?
映画『シャイニング』の続編で、強大な超能力を持つ少女と、あの事件から40年経ち、大人になったダニー(ユアン・マクレガー)の二人が、トゥルー・ノットと言う、超能力を持った子供を殺して、その生気を吸い取る集団と戦う。
その、決戦の舞台に選ばれたのが、『シャイニング』のオーバールック・ホテルだ。
前作でダニー・トランスを演じた、ダニー・ロイドがカメオ出演しているのも注目だ。
▶︎▶︎▶︎ 昔の怖い体験が悪夢となってダニーを苦しめていたが、幽霊となって現れた黒人の料理人、ハロランの助言によって、それらを封じ込めることに成功していた。
自分の力を封印するように酒を呑んで、ダニーはアル中になってしまったが、立ち直ろうと、全く知らない街にやって来て、新しい生活を始めることに。
ところが、ダニーを待っていたのは、強力な超能力を持っているアブラと言う少女からの交信だった。
彼女によると、子供を誘拐して、その生気を吸い取る邪悪な集団、トゥルー・ノットが存在すると言う事だった。
アブラから、自身も狙われている事を告げられ、助けを求められたダニーは、トゥルー・ノットと戦う決意をするが、女ボスのローズ(レベッカ・ファーガソン)は強大な力を持っていて、アブラも拐われてしまう……。
見所&解説 (ちょっとネタバレ気味かも知れません!)
まず、映画と言う、一つの個体として見た場合の一言
一言で言って、荒唐無稽過ぎる。
人間の生気を吸い取る超能力集団トゥルー・ノット?
かなりバカバカしい。
ヴァンパイアを意識したキャラクターだろうけど、そんな集団が今の世の中、本当にいると、仮定して作られたかと思うと、コメディにしか見えない。
つまり、怖さにリアリティがない、と言う事だ。
トゥルー・ノットが、何かのカルト教団的の方が、よっぽど現実味がある。
なぜ、こうなったかと言う理由は簡単だ。
小さい頃からシャイニングを持ったダニーと、強力な力を持つ少女アブラが協力して、ローズ・ザ・ハットと闘う構図が必要だったからだ、と最初はそう思ったのだが……、実は、この構図にも、ラストを見て意味がある事が分かった。
実は『シャイニング』の続編は『ドクター・スリープ 』ではなかった!
実は、この『ドクター・スリープ』の原作をスティーブン・キングが書き上げる前に、ワーナーはキング抜きで『シャイニング』の続編の企画を進行していた。
内容は、オーバールック・ホテルが開業した当時に、一体このホテルで何が起こったのか? と言う内容だった。
ところが、この企画が進行していた時、キングは「ドクター・スリープ」を発表し、ワーナーの企画は頓挫したのだ。
これは、「スティーブン・キング 映画&テレビ コンプリート・ガイド」と言う本に掲載されている。
注意! ここからはネタバレしないと解説できません!
まだこの映画を見ていない人は、本編を楽しんでから、また遊びに来て下さい。
結局、映画『シャイニング』では完結しなかった、オーバールック・ホテルの終焉を描くのが、本作の使命だと、最初は思っていた。
実際、ご存知の人も多いだろうが、原作の「シャイニング」のラストでは炎上し、その姿は無くなっている。
だから、小説の「ドクター・スリープ」のラストは、オーバールック・ホテルの跡地でローズと対峙することになっている。
本作では、映画『シャイニング』の続編と歌っているので、決着をつける意味でも、ホテルを炎上すると最初から決めていたようだ。
ところが、肝心のホテルを舞台にしたローズとの戦いは、駆け足のようにラストへ向かって進んで行く。
しかも、何のジョークだ? と思えるように、ダニーを苦しめた幽霊たちが一同に現れ、ローズに襲いかかり倒してしまう。
これが『シャイニング』の続編? なんと安っぽい展開なんだ……、と僕は呆れてしまった。
実際、ネットでのコメントを見ても、『シャイニング』のファンを名乗る人は、この『ドクター・スリープ 』を認めたくない、残念だ、と言う意見もチラホラ見かける。
この時点で、僕はこの作品に対して、何と言う駄作を作ってしまったんだろう……、そう思っていた。
※ 僕がこの作品を評価できなかったのは、トゥルー・ノットの存在だ。
銃で撃たれると、灰になって死ぬ事から、幽霊ではなく、肉体が存在する事が分かる。
だが、この集団は、人間の生気を吸うとか、その生気をポットみたいな容器に貯めておくとか、小説ならまだしも、絵で見せられると、コメディにしか見えない。
トゥルー・ノットのような集団の存在は、聞いた事がないし、明らかにこの作品を作り出すために、キングが考え出したものだ。
何度も言うが、全くリアリティがないのだ。
しかし……。
ラスト・シーンが意味するもの
さて、ホテルと共に、ダニーは死んでしまったが、『スター・ウォーズ』のヨーダやオビ=ワンのような、フォース・ゴーストのように、アブラの自宅に現れ、彼女に助言する。
「最初に出会った時には、その能力を隠せ、と言ったが、君は今のままでいい、輝き続けろ」と。
そして、アブラの母親が部屋に来て、「ご飯よ」と告げる。
アブラは分かったと言い、一階に降りて行こうとするが、その時、浴室に、オーバールック・ホテル237号室の、あの老婆の幽霊を見つける。
するとアブラは、落ち着いた表情で浴室へ入り、ゆっくりとドアをしめた……。
そうだったのか!
そのラストシーンを見た瞬間、今まで見て来た物語の意味が一変した!
『ドクター・スリープ』の由来
ダニーが看護師として勤め始めた病院で、彼はその能力で、死ぬ患者の事が分かった。
そして、死を怖がる患者に対して、「大丈夫、眠る事と一緒だよ」と言うと、患者は安堵の表情で息を引き取っていく。
その事から、患者の間では、安らかに眠らせてくれると言う意味で、「ドクター・スリープ」と言う愛称で呼ばれるようになった。
はて、そんな単純な理由で、キングは小説のタイトルを付けるだろうか?
絶対付けない、はずだ。
そこで、このタイトルの意味を考えた。
ダニーは、永遠の命を持っていると考えられるトゥルー・ノットと闘うが、全員を灰にしてしまった。
最後に残ったローズも、オーバールック・ホテルで灰になった。
長年ダニーを苦しめていた、ホテルの悪霊たちも、ホテルを燃やす事で浄化(←アブラの言い方)した。
この一連のことを考えると、「ドクター・スリープ 」とは、ダニーの持っているシャイニングによって、霊を沈める、分かりやすく言うなら「成仏」させる人を指す、と解釈出来る。
人でも、霊でも、得体の知れない怪物でも、安らかに寝かせてしまう力を持ったダニーを「ドクター・スリープ 」と呼ぶなら、タイトルの重みはグッと増し、何よりも、あのラストシーンの解釈はこうなる!
ラストシーンに込められた思い!
老婆の霊がいる浴室に、アブラがゆっくりと入って行くラストシーン。
そうなのだ。
このシーンが意味するものは、ダニーから、アブラが「ドクター・スリープ」の役割を受け継いだシーンなのだ!
単純に、『シャイニング』の続編と言う形を取ってはいるが(実際に続編には間違いないが)、実はダニーからその能力を受け継ぐ二人の物語、だったと解釈できるはずだ。
その上で、もう一度この映画見て下さい。
きっと僕の言う事が、荒唐無稽ではない、と言う事が分かって貰えると思います。
※ 本日は長くなったので、「ヒッチ先生の【談話室】」はお休みします。
作品インフォメーション
この映画を見るには、次の方法があります!
1. Amazon prime videoでレンタルする(有償)
ドクター・スリープ(字幕版) ¥399
2. ブルーレイ・ソフトを買う
ドクター・スリープ ブルーレイ&DVDセット (初回仕様/3枚組/ディレクターズカット ブルーレイ, ポストカード1枚付) [Blu-ray]
3. 近くのレンタル屋さんに行く…
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