映画『マンハッタン殺人ミステリー』素人探偵ものは面白い!
ウディ・アレン監督作の中でも、異色のミステリーを紹介します
微妙な男女関係とミステリーを融合させたら傑作が誕生!?
こんな人にオススメ!
- ウディ・アレン監督作品が好き
- 少し変わったミステリーが見たい
- 素人探偵物が好き
- ユーモアとブラックジョークを堪能したい
どんな映画?
ウディ・アレンが当時、出演を考えていた、同棲相手のミア・ファーローに変えて、元カノのダイアン・キートンをパートナーに迎えて作った1993年の作品。
ドタバタ・コメディをベースにしながらも、殺人事件を疑った妻を中心に、それを取り巻く微妙な男女関係を見事に描いた作品。
ミステリーの性格上、詳しくは言えないが、物語の発端はこうだ。
▶︎▶︎▶︎ 出版社に勤めるラリー(ウディ・アレン)と妻のキャロル(ダイアン・キートン)は、マンションの向かいに住む、ハウス老夫婦と親しくなった。
だが、次の日、二人が帰宅してみると、元気だった奥さんが心臓麻痺で死んだと、大騒ぎになっている。
心臓に持病があったと言う夫ポールの話に、疑問を持ったキャロルは、外ですれ違っても、悲しむ様子がない夫を不審に思う。約束していたケーキを持って、ラリーと一緒に訪ねた向かいの部屋で、キャロルはキッチン下の扉の中で、遺灰を発見してしまう。
キャロルはますます、殺人の疑いを強く持ち始めるが……。
(⭐️ はオススメ度を表しています)
見所&解説
ウディ・アレン印の作品に慣れている人なら、きっとこの作品の面白さは、分かってもらえるはず。
もちろん、真剣にミステリーとして見るなら、「?」と思うシーンも幾つか目に付きますが、ここで一番大切なのは、ウディ・アレンのミステリー作品、と言うことです。
恐怖の中に、笑いを取り入れる事で、より恐怖を引き立てる。
それは、『タロットカード殺人事件』『教授のおかしな妄想殺人』よりも、本作がダントツに優れています。
その魅力を、ネタバレなしで深掘りしていきたいと思います。
ウディ・アレンは苦手、と言う人もお付き合い下さいね。
ウディ・アレンは苦手だ! まずはここから…
と言う人は、彼がスクリーンの中で繰り広げる、あの言動にイライラさせられる、と言うのが主な原因じゃないでしょうか。
見た目だって、主役を演じるにはイケメンでないし、優柔不断の性格は、自ら発する毒舌のオーラに包まれ、見る者を不快感にさせる……。
まるで、セラピーを何年も受けていない患者のように見えることでしょう。(『ボギー!俺も男だ』の中でも本人が、ギャグとして言及していました)
僕も、初めて彼を見た時は、そんな感じで見ていました。
でも、よく考えると、自分が監督する作品の中で、自身をそんなダメ男に演出するって、一体どう言う神経しているんだろうと、逆に興味が湧いてきたんです。
映画オタクな監督?
興味を持ち、色んな彼の作品を何回も見ると、まず、映画オタクだな、と言うことに気が付きました。
彼が監督した、ほとんどの作品に、映画の話題が出てきます。(しかも尋常じゃないぐらいに、マニアックな視点で語られます)
なんか、それだけで親しみが湧いてきちゃったんですよね。
映画好きで映画通、映画を語る時に妥協しない。
彼が監督である、と言う以前に、映画ファンである、と言う部分に惹かれてしまいました。
だから、この映画も、そんなマニアの視点で見ると、もうラストなんか最高! となってしまうんですよね。
それではネタバレなしで、見所を紹介!
この作品で注目して欲しいのは、ウディのアドリブです。
え? 監督(兼主役)がアドリブ? そう思われるかも知れませんが、よく見ていると、それに気付く人もいると思います。
妻役のダイアン・キートンは、ウディとの会話の途中で、思わず笑ってしまうシーンが何度かあります。
これは、台本にある笑いじゃなくて、ウディのセリフを聞くダイアンの、彼のアドリブによる失笑、に間違いありません。
面白いのが、これに対して、絶対笑わないと言う頑固な姿勢で挑んでいるのが、他の共演者たち。
ダイアンが笑っているのに、あえて無視しているのが、その態度から分かります。(レストランではボーイが耐えきれず笑っていました。しかも顔を逸らして)
この、珍しいアドリブの数々を、意識していたら絶対わかります。
出演者が、こんなに楽しそうにしている映画が、つまらない訳がないと、思いませんか?
映画へのオマージュ
映画の中に映画を入れるのが好きなウディ、例えば『ボギー!俺も男だ』なんて、もろ『カサブランカ』を下敷きにしていました。
この映画の中でも、「ボブ・ホープの映画見たい」、「それは『深夜の告白』だよ」、と言うセリフで映画を登場させますが、本作のクライマックスには、映画ファン、特にオールドファンの人ならきっと唸ってしまうシーンがあります。
それは、オーソン・ウェルズとリタ・ヘイワースが出演した、1944年の『上海から来た女』、この映画の名シーンを、何と、大胆にもクライマックスで上映させ、そのシーンと、現実をシンクロさせているんです。
ここは間違い無く、この映画一番の見所です!
いつもとは違うイライラが…
今回の作品で、いつもと違う点が一つあります。
ウディ・アレンのイライラは、見る人にとれば、ああ、いつもと一緒だな、と感じると思いますが、今回は、そのウディの上を行くのが、妻役のダイアンの存在です。
そんな事はどうでもいいだろう、そんなのは妄想だ、と制御しようとするウディを無視して、勝手に物事を進めるは、離婚した男友達を呼び出して探偵ごっこに走るは、やりたい放題。
この言動には、見ている人の中にも、ラリーのように、イライラする人がいるかも知れません。
そうした態度が、結果として、ラリーとキャロルの間に溝を作ってしまいます。
ですが、、この映画のラストカットに、観客は注目しなければなりません。
散々ダメ夫をぶりをネタにされたラリーですが、名誉を挽回し、プライドと信頼を取り戻した彼は、こんな行動に出ます。
マンションの入り口で止まると、振り返り、ざまあみやがれ! と言わんばかりのドヤ顔を見せて、映画は幕を下ろします。
これ、普通に見れば、妻にちょっかいをかけていた男に、俺の方が凄いんだ! と言う意味のドヤ顔だと思いますが、この頃、プライベートで揉めて、ミア・ファーローにボロクソに言われ続けていたウディ・アレン。
それに対して、最大限の仕返し、強がりのように見えるのは、僕の妄想でしょうか……。
ヒッチ先生の【談話室】
『深夜の告白』言うたら、『白いドレスの女』で大胆にリメイクされとったな
あの作品も、映画オタクのローレンス・カスダンが監督したんですよね?
あと、キャサリン・ターナーの魅力も凄かったですよね
リタ・ヘイワースと言えば、『ショーシャンクの空に』にも出てたやろ?
ポスターじゃポスター
ポスターが、脱走に一役買っていると言う…
ほんなら、彼みたいに、映画はもちろん、本や音楽に、もっと精通して、知的にならんと恥かくで
今日もありがとうござ……い…まし……た
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