映画『女王蜂』事件解決、その後の真相に涙が止まらない…
少し暑くなって来た夜、こんなミステリーはいかがでしょうか?
時計台…、いや、口紅にミステリー!
こんな人にオススメ!
- もちろん、横溝文学が好き
- もちろん、金田一耕助が好き
- もちろん、ミステリーが好きでこのシリーズのファン
- もちろん、見たことがない人
どんな映画?
東宝の金田一耕助シリーズ、4作目にあたる1978年の市川崑監督作品。
中井貴一の姉、中井喜恵のデビュー作で、当時カネボウ化粧品とタイアップしたCMに出演、「口紅にミステリー」と言うキャッチフレーズが話題になった。
開かずの間の密室トリックは、〇〇に頼る所が強く、『本陣殺人事件』と比べ、本格推理ファンの間では物議を呼んだ。
▶︎▶︎▶︎ 伊豆に位置する月琴の里。
名家、大道寺家に学生だった速水(仲代達也)と日下部が訪れたが、滞在中に日下部と大道寺琴絵(萩尾みどり)は恋に落ち、子供を妊ってしまうが、当時、二人は知る由もなかった。
三カ月後、手紙で妊娠を知った日下部は再び大道寺家を訪れ、親の反対で、今はどうする事も出来ないと琴絵に告げに来る。
琴絵の家庭教師、神尾秀子(岸恵子)が二人から目を離した隙に、開かずの間で琴絵の悲鳴が聞こえ、駆けつけたが、鍵が掛かっており、中に入る事ができない。
すると、中から琴絵が扉を開け、神尾が中に入ると、日下部は頭から血を流し死んでいた。
とっさの判断で、日下部を事故に見せかけて、事件は大道寺家の秘密となった。
数年後、日下部と琴絵の間にできた娘、大道寺智子(中井喜恵)が19歳になり、京都へ引っ越す事になったが、智子に好意を抱いていた男が時計台で無残な死体となって発見された。
一族に、脅迫状が届いていた事が明らかになり、そこへ同じ脅迫状を持って、金田一耕助がやって来るが、それが連続殺人事件の幕開けとなってしまった……。
見所&解説
昔のブログで、『犬神家の一族』の時にも指摘したが、本作でもトリック(密室)に致命的なミスがある。
それを、映像的に、力技で回避している所があるので、ミステリーという性質上、最後に深掘りしたいと思うので、すでに作品をご覧になった人だけ読んで下さい。
その前に、この作品の魅力を解説していきましょう。
原作では絶世の美女!
この作品のヒロイン、大道寺智子。
演じるのは、本作がデビュー作となった中井喜恵だが、かわいいとは思うが、男を惑わすような絶世の美女とは言い難い。
原作をあの頃読んだが、僕の頭の中では、小林麻美こそ大道寺智子にふさわしいと、妄想していた。(ふ、古い…)
ラジオ、オールナイト・ニッポンでパーソナリティをしていた当時、かなり暗めの印象だったが、顔が好きだった。(←かなり個人的な話だなぁ…)
等々力警部のセリフに注目
加藤武が演じる等々力警部は、面白いセリフや重要なセリフなど、今回はセリフに注目してみると新しい発見ができるはず。
いつもなら、「よし、わかった!」と、連発するセリフに、ニヤけてしまうが、今回は一味違う。
最初は、時計台の周辺を捜査している時にこんな事を言う。
「なるほど、時計台にミステリーか」
そして、開かずの間の鍵がある場所を指定した紙が、琴絵の形見の口紅から出て来たと、智子から聞いた時には、「口紅からミステリー」と、ちゃんとお約束を守るのだ。
そんなトボけた等々力警部だが、3人目の殺人が起こった時には、こんなカッコいいセリフを、ズバリ言ってのける。
”女王蜂をめぐって、三人目の血が流されてしまった!“
そしてラスト、列車の中で、金田一耕助と再会した時のセリフは、心を打つ事、間違いありません。
もう一人の主役!
この作品の主人公は、もちろん金田一耕助に違いないが、もう一人、隠れた主役が本作には登場しています。
イラストにも描いた名優、伴淳三郎です。(オールド・ファンにはお馴染みですね)
山本巡査役で、最初から最後まで登場し、見る人に印象深く、その存在感を残しています。
決して前に出る事はないが、この悲しい事件、作品をしっかりと支えている。
時にユーモラスで、面白キャラなのか、と見ていると、人の心を語れる、人情味あふれるキャラでもある。
この金田一シリーズは、数々の名優たちが生み出した、傑作シリーズなのだ、と改めて認識させられます。
事件解決後の三十分に…
事件の真相は、始まってから1時間45分頃には、一応の解決を見せる。
ところが、家庭教師の神尾秀子は、事件の核心を毛糸の暗号に秘め、金田一にそれを託す。(解読する事を想定していた)
その暗号が解読された時、本当の真実が明かされる。
このラスト30分に、監督、市川崑の映画に対する哲学と愛を感じ取って欲しい。
この作品を見よう(リピートを含めて)と言う人がいたら、このラスト30分に注目して見るべきだ。
映画の、底知れぬ表現の素晴らしさに、きっと心を奪われるはすだ……。
金田一さん、あなたの推理は間違っています!(注意! 以下ネタバレとなっています)
謎の男、開かずの間、消えた指輪、寄木細工の部屋、月琴の秘密、コウモリの謎……。
本格ミステリーとして、文句無しに楽しめる映画、観た者を惹きつける作品に間違いない。
しかし、最後にネタバレとして言っておきたい事がある。
それは密室の謎解きのシーン時だ。
金田一は、密室のトリックをこう解いた。
琴絵が開かずの扉を強く閉めた時、カギが振動で落ちて、偶然にも密室が出来てしまった、と。
ところがだ、その前に、日下部を殺した犯人は、脱兎のごとく開かずの間を飛び出して行く。
その際、琴絵よりも遥かに凄い勢いで扉を閉めているのだ。
ところが、ここで監督の市川崑は映像でそれを誤魔化している。
その扉が、勢いよく閉まってしまうと、琴絵が再び部屋に入ることも出来ず、密室のトリックが成立しないので、扉が勢いよく閉まる直前で、ストップモーションをかけているのだ。
扉が急ブレーキをかけたように止まる……。
これは、よく見ると不思議なシーンだ。
そこまでするなら、犯人はワザワザ扉を閉める行為を、しなければ良かったのではないか?
もし、このストップモーションが無ければ、密室は既に完成しているので、金田一耕助の推理は間違っている、と言う事になってしまう。
意地悪な言い方をすれば、映像で嘘をついている、と言う事になる。
ま、そんな事は、作品を普通に見ていれば、面白いから、全く気にもならない話、なんだけどね……。
ヒッチ先生の【談話室】
何か、作品についての情報ありませんか?
でも、特撮ヒーローが好きな人間には、ちょっと面白いシーンがあったやろ?
はて、そんなシーンありましたか?
仮面ライダー2号の佐々木剛と、ミラーマンの石田信之、それに、仮面ライダーの立花レーシングのおやっさんこと、小林昭二が、ひとつのシーンで顔を揃えてたがな
先生、本日もありがとうございました
ディスカッション
コメント一覧
はじめまして。
今日BSで女王蜂をひさしぶりに鑑賞し、皆さんがどんなレビューを書いておられるかと検索したところ、こちらにたどり着きました。
たくさんのデータ、感想、とても興味深く、どうやら同年代…少しお兄さんかしら?のようで、昔観た映画のレビューが特に面白かったです。
好きな映画の傾向が似ているかもしれません。
ヒッチコック監督を先生と呼ぶのも同じです(^^)
またゆっくり寄らせていただきますね。楽しみにしています。
ノリスケさん、コメントありがとうございます!
僕も、自分が見た映画を、他の人がどんなレビューしているのかを見るのが楽しみです。
100人いれば100人の感想があって、とっても楽しいですよね。
最近の映画も結構見ているんですが、やっぱり昔の映画の方が、イラストを描くにしても、内容を書くにしても、そっちの方が楽しいんですよね。
このブログを読んで頂けたら、同年代の人なら、きっと楽しんでもらえる、そんなブログを目指しています。
それに、ヒッチコキアンの僕にとって、「ヒッチ先生」なんですよね。
ノリスケさんも「先生」と言うなら、相当な映画マニアだと感じます。
また、気軽に遊びに来てください。
コメントでも、映画の話ができたらいいですね。
どうも、ありがとうございました!