『悪魔の手毬唄』 シリーズ中、最も切ないミステリーの名作!

手毬唄になぞられた犯人の意図を知った時、あなたはきっと涙する…

   こんな人にオススメ!

  • 横溝文学、金田一耕助のファン
  • 見立て殺人のミステリーが好き
  • まだ見たことが無い、と言う人
  • 最後、切ない涙を流したい人

どんな映画?

『犬神家の一族』に続いて、市川崑監督、石坂浩二主演で1977年に制作されたミステリー作品。
公開当時、『犬神家の一族』よりも怖いと評判になったが、地味な内容から、前作ほどヒットしなかった。
しかし、シリーズの中でも最も複雑な人間関係が、珠玉のミステリーを作り出している。

※ミステリーの性格上、詳しく書くことが出来ないのでご了承ください。
▶︎▶︎▶︎ 磯川警部(若山富三郎)に、鬼首村の亀の湯に呼び出された金田一耕助(石坂浩二)は、20年前に起こった迷宮事件の真相を突き止めて欲しいと頼まれる。
金田一が困っていると、放庵と言う老人から手紙の代筆を頼まれ、家に出向くと、その20年前の事件と関係を持っていそうな、恩田と言う詐欺師の話を聞く。
そして第一の殺人が起こり、金田一は事件の渦中に。
殺された孫の祖母から、手毬唄を聞かされた金田一は、第二、第三の殺人に、手毬唄が関係していると推理するが……。


「犯罪者は、どこかヘマをするもんです!」

見所&解説

見所はズバリ、等々力警部の迷推理!?

シリーズで最も人間関係が複雑な作品。(初めて見る人は、メモが必需品になること必至です)
ミステリーの性格上、本当に詳細は言えないので、少しでも楽しく作品を見られるような話を中心に進めていきます。

  • 通常、ミステリーには探偵役と、それに対抗する警察側の人間、特に警部などが登場するわけですが、この作品には、磯川警部と、全シリーズに登場する等々力警部(加藤武)の二人の警部が出ているのが異色で面白い。
  • 冒頭で、金田一が磯川警部の依頼に、「第一、警察官が探偵を雇うなんて話、聞いた事がありませんよ」と言うと、磯川警部は「そうですか?」と答える。ちょっと笑えます。
  • 等々力警部は、東宝の5作品全てに出演して、迷推理を展開してくれますが、一見間違った推理をワザとするキャラクターだと思っている人、それはちょっと違います。
    等々力警部が、「よし! わかった!」と言って推理をするが、実に的外れなもの。ただ、この時に語る推理こそ、物語の途中で、今の状況を語ってくれている事が多い。整理している、と表現してもいい。
    何々がこうなったから、犯人は誰々だ! と言う事で、複雑な物語の筋道を再度確認してくれているのだ。
  • 横溝正史の小説は、陰惨で、血みどろで、人間が鬼畜すぎるとよく聞きますが、僕はそう言う風に思った事は一度もありません。
    1977年、高二の夏休み。すでにブームになっていた角川文庫で、横溝正史の「女王蜂」を買って、夜の12時頃から読み始めました。400ページ以上あって、昔の文庫だから、字もビッシリ詰まっていました。読み終わったのは朝方で、明るくなったのを覚えています。この時、横溝正史の本を読んだのが初めてでした。第一印象は、なんと煌びやかな文章! 物語やトリックも考え抜かれている!「陰惨な事件を扱う分、文章はとても華麗なんだ!」ああ、早く次の小説を買わなくっちゃ! その後、どハマりした事は言うまでもありません。

さて、話を元に戻しましょう。
鬼首村を仕切っているのが仁礼家で、ブドウ園とワイナリーを経営している。
それが、第一の殺人では仁礼家の屋号が入った升とじょうごが使われていた。
第二の殺人では、そのワイナリーの樽の中で、文子が殺されていた。
なのに、金田一が事件の真相に気付く、犯人のトリックを見破るアイテムがみかん、と言うのがなんとも皮肉な話じゃないでしょうか。

○○○+○ エキストラボール ここからはネタバレっぽいので未見の人は読まないで!

● ずるい演出がある。三人目の犠牲者、里子が殺される場面で、老婆が逃げるシーン。
その逃げて行く後ろ姿は、明らかに男の姿だ!

● 殺された由良泰子の祖母が手毬唄を歌いながら手毬をつく。異様としか言いようがないのは、手毬をついているのに全く回転しないのだ。これは後に、三人の人形風の女の子が手毬をつくが、この時も全く回転しない。しかも、重力を全く感じさせないような演出が、見ていて違和感を覚えるが、なんどもスロー再生して理屈が分かった。
手毬に糸かゴムを付け、ヨーヨーのようについているのだ。だから80歳を超えた老婆が一度もミスしないし、仮面を付けた女の子たちも、見ないで手毬をつけているのだ。

● オープニング・クレジットは、市川崑のタイポグラフィとして有名になったが、脚本・久里子亭(クリステイ)とは、アガサ・クリスティーに敬意を払った市川崑と共同執筆者のペンネームだ。
松任谷由実のペンネーム、グレタ・ガルボに憧れた呉田軽穂みたいなものです。

● 『犬神家の一族』の時に、金田一のあのモジャモジャ頭にするため、地毛で臨んだ石坂浩二だったが、ダメージがひどくて、この『悪魔の手毬唄』ではカツラで演じています。(以降の作品も全てカツラ)


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