映画『ウイラード』 実は二つの同じストーリーが進行していた!

2020年6月13日

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友情が裏切られた時、それは復讐心に変わって行く!

   こんな人にオススメ!

  • ネズミの大群を見ても大丈夫!
  • 動物系のパニック映画は好き
  • 昔、テレビでしか見たことがない

どんな映画?

『いちご白書』(1970)でスターになったブルース・デイヴィソンが、翌年の71年に主演したパニック・ホラー。
登場するネズミたちは全て本物で、ちゃんと演技の訓練を受けている。

▶︎▶︎▶︎ 死んでしまった父の会社をアル(アーネスト・ボーグナイン)と言う男に乗っ取られ、その会社に勤めていた息子のウイラード(ブルース)は、そのアルから執拗ないじめを受ける気弱な青年だった。
ネズミを嫌がった母親から、処分するように言われるが、ネズミとの間に、奇妙な友情を感じたウイラードは殺さずに、ペットのように地下室で飼い始めた。
やがて、父の残した屋敷までも奪おうとするアルに、復讐の心は徐々に膨れ上がる。親友のネズミ、ソクラテスがアルに殺されたことで頂点に達した。
その頃、ウイラードの屋敷の地下室には、すでに数え切れないネズミの大群が生息していた……。


「エサをやったんだから、言うことを聞くんだ!」

見所&解説

見所はズバリ、大群のネズミたちの演技!

ハムスターなら不思議じゃないが、その辺にいるネズミなんかと友達になろうなんて思わない。ウイラードも最初、ネズミを見つけた時は殺そうとした。でも、命の尊さを感じたのか、あるいは弱い自分の立場と重なって見えたのか、水の張った池から助け出す。
このネズミたちは、明らかに演技している。(ように見える)
当時のハリウッドには、映画に使われる動物たちを、専門に演技指導する会社があって、犬や猫はもちろん、こんな小さなネズミまで、撮りたいように動かすことができた。
人間の言葉も理解できない動物を、どうしたら言う事を聞くように訓練するのか、さすがにトレーナーも苦労したに違いない。
今はそんな苦労はいらないよね、全部CGだもん。

さて、僕は来年還暦を迎えるが、歳をとると言う事は、悪いことばかりじゃない。
長い間映画を見続けることで、昔は気付かなかったものが見えてくることもある。
それがこの『ウイラード』を見ている時に感じた。

アルと言う、会社を乗っ取った男は、チクリチクリとウイラードをいじめる。それは徐々にエスカレートして、母親が死んだのをきっかけに、父親が残した屋敷まで乗っ取ろうと画策する。
ウイラードは、今までの怒りを爆発させるように、ネズミを使って復讐しようと考える。
実はこれと同じ構図が、ベンと名付けられたネズミとウイラードの間で起こっている。
ウイラードは、白いネズミ、ソクラテスを一番に可愛がっていた。ベンには、あまり思い入れがなく、「あっちへ行け、こっちに来るな!」どちらかと言うと、厄介者扱いで、可愛がるのはソクラテスだけだ。
ところがそのソクラテスが殺されて、ベンに目を向けたウイラードは、ベンがボス的な感じがして怖くなる。
そして、目的を達したウイラードは、ネズミたちがジャマになり殺そうとする……。
だが、頭の良いベンは、ウイラードが自分たちを裏切り、殺そうとしているのを感じ取っていた。
そう、この映画、アルにいじめらたウイラードが復讐、ウイラードに邪険にされ裏切られたベンが復讐、この構図がパラレルに進行していたんです。

1970年代には、TVで何回もオンエアされ、まだ10代だった僕も何回も見ました。でも、今回ブルーレイで再見した方が断然面白かった。
その要因は、もちろんノーカットで見られた、と言う事と、歳を取って違った視点でも見られた、と言うかことが大きい。
昔は単純にネズミが人を襲うパニック映画。今は、パワハラだったり、コミュ障だったり、様々な情報を感じ取れるようになりました。
ま、50年近くも経過すれば、当たり前の事かもね……。
教訓、「自分がされて嫌な事は、他人にするな!」と言う事じゃないでしょうか?

○○○+○ エキストラボール

●昔々、動物が群れを成して人を襲うと言えば、ヒッチコックの『鳥』(’63)をルーツに上げる人も多いともいますが、個人的には、チャールトン・ヘストンが主演した『黒い絨毯』(’54)のインパクトが大きい。
こちらは、人食いアリの大移動が始まった南米が舞台のパニック映画で、タイトル通り、山々が黒いアリで埋め尽くされる描写が圧巻でした。

●元クリント・イーストウッドの奥さん、ソンドラ・ロックがウイラードの友人以上、恋人未満の役で出演しています。
その後、彼女は『アウトロー』でクリントと共演して結婚、以後『ダーティーハリー4』『ガントレット』で夫婦共演しているが、夫婦共演と言えばポール・ニューマンとジョアン・ウッドワードやブロンソンとジル・アイアランドだったり、ハンフリー・ボガートとローレン・バコールなんて言うビッグネームもある。
やりにくいと思うんだけど、アラン・ドロンなんて、当時愛人と言われたミレーユ・ダルクと堂々と共演しているんだから別格だわ。
そのタイトルは『愛人関係』だって。(『栗色のマッドレー』『ボルサリーノ』等々たくさん共演してます)

●最近は、動物や昆虫よりも恐ろしいものが、大群を成して人を襲う。そう、生ける屍、ゾンビだ。
時代が変わると映画も変わる、と言う事か……。

●続編は『ベン』と言うタイトルで、少年と本当の友情が描かれている。主題歌は子供時代のマイケル・ジャクソン。
ドーナツ盤を買って、何回も聴きました。


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パニック

Posted by rockaria