映画『鳥』 ただのパニック、恐怖映画、じゃない「9」の理由。

2022年2月20日

どーも、ロッカリアです。
さて、今日ご紹介する映画は、サスペンスの神様と言われた、ヒッチコックの動物パニック作品でありながら、恐怖映画の要素が詰まった作品です。

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「鳥たちが人間を食いちぎるこのショック! 凄まじい恐怖が、あなたを襲う!」(リバイバル時のキャッチコピー)

・動物パニック映画は好き
・ヒッチコックの演出に酔いたい
・ラブコメからの惨劇を体験したい

どんな映画?

当時、最先端の電子音楽で鳥の鳴き声を作り、映画音楽としてのサウンドトラックを劇中で使用しない、アルフレッド・ヒッチコック監督の恐怖映画。

ラブコメ風の冒頭から、突然パニック映画に転換する演出は、まさにヒッチ先生が得意とするところ。
しかも、現代のコロナ禍にあって見るこの作品、本当の恐怖は、見終わった後に訪れるかも知れません。

この『鳥』以前にも、アリやコウモリを扱った、いわゆる動物パニック映画と言うものは存在したが、この作品が誕生した事により、後の動物パニック映画の礎を築いた。
それほど、この映画はインパクトがあり、意味がある。

▶︎▶︎▶︎ サンフランシスコのペットショップに、頼んでおいた鳥を受け取りに来たメラニー(ティッピ・ヘドレン)は、妹の誕生日プレゼントに、ラブバードを買いに来たミッチ(ロッド・テイラー)に、店員と間違われる。
ミッチに興味を持ったメラニーは、店員のふりをして近付くが、すぐにバレてしまう。
結局、ラブバードが無かったミッチは店を後にする。
彼に惹かれたメラニーは、後日、ラブバードを手に入れると、彼の自宅を調べて持って行き、驚かせようとする。
作戦は見事に成功し、ボートで帰るメラニーを見つけたミッチは、慌てて車で彼女を追いかける。
もうすぐ岸に着くと思った時、一羽のカモメが、突然メラニーを襲い傷付けた。

この出来事が、恐怖の幕開けとなる……。

この電話ボックスのシーンにも意味があります

見所&解説

鳥が大挙して人間を襲い、人々がパニックになる映画、若い頃、僕はそんな風に思っていました。
勿論、それって間違ってないと思うんですが、2020年から世界に広がった新型コロナ、その影響下で見ると、また違った作品に見えるんです。
ま、それは後回しにして、このヒッチコックの『鳥』が、どれほど映画界に影響を与えたのか、ただの恐怖映画ではない理由を詳しく解説して行きます。

その1 「招かざる客」

それまで何もなく、平和に暮らしていた町(場所)に何か事件が起こると、それを誰かの責任とし、悪魔呼ばわりされてしまう。
まして、それが外部から来た人間となれば尚更だ。
スティーブン・キング原作で、映画化もされた『ミスト』では、狂信的なキリスト信者が、その役を担っていた。
このパターン、よく見かけません?

その2 「この世の終わりキャラ」

「この世の終わりだ!」と叫び(あるいは呟き)、周りの人々の不安をあおる。
こんな人物、映画の中によく登場してせんか?
見ている観客にも不安を与える効果、抜群ですよね。

その3 「ここだけ?」

他の地域では、一体どうなっているのか?
この『鳥』では、ラジオを通じて、鳥が襲う現象が徐々に、他の町に広がっていることが分かる。
ゾンビ映画で、よくあるパターンじゃない?

その4 「予言的プロローグ」

この映画では、主人公のメラニーが、サンフランシスコの街中で、鳥の大群が飛ぶのを目撃する。
このシーンは、露骨なまでに、これこれから起こる出来事の予告的なシーンだが、深く考えると、田舎の町で起こった出来事が、やがて都会でも起こるかも知れない、と考えらる。
この冒頭での予告的なシーンは、多くの映画で使われいます。

その5 「流れが一変」

それまでの物語が、あることをきっかけに、180度変わる。
ヒッチ先生は、これに先立つ『サイコ』で、この手法を大々的に使って成功している。
この『鳥』では、ある時点まで、まるでラブコメのように展開する。
ミステリー映画では、この手法が結構用いられている。

その6「対象物の圧倒的多数」

これもゾンビ映画に多い。
対象物、ゾンビでも鳥でも、圧倒的多数を目の当たりにすると、絶望感がハンパない。

その7「閉ざされた空間」

ここでは、田舎の港町という範囲に限定している。
この、最悪の出来事を、閉ざされた空間で展開することで、主人公たちの逃げ道を閉ざす役割がある。

その8「効果音」

『鳥』は、映画音楽がない、極めて珍しい作品。
当時では、まだ珍しいシンセサイザーを駆使して、カモメやカラスの鳴き声は勿論、羽ばたく音を効果音として作り出した。
映画の効果音は、極めて重要で、今はコンピューターで、自在に効果音も作れるが、この時代としては、かなり先端的な技法だった。
特異なのは、ヒッチ先生は、音楽がなくとも映画が成立することを証明してしまった、事じゃないでしょうか。

その9「答えのないエンディング」

映画のラストは、必ず結末が存在するもの。
そんな常識をいとも簡単に覆したエンディングに、当時は賛否両論だった。
今でこそ、いろんなラストがあって、寛容になっているが、いつの時代も、保守派は異端を嫌うものなんですね。

広い意味で、恐怖映画の全てが詰まっている、テキスト作品と言っても、大袈裟じゃない、そう思いました。
更に、2019年後半から世界的に流行り始めた新型コロナ。
テレビニュースで頻繁に取り上げられるようになると、人々は、いつ我が国へ?
自分の国は大丈夫なのか?
自分の街は?

そして、世界中でパンデミックが……。

動物と、見えない細菌との違いはありますが、まるでこの『鳥』の続編のような世界になった、と言えば、それは大袈裟だよ、怒られるでしょうか。

【あくまで個人の意見です】
【トリビア】

昔、デュ・モーリアの原作も読みましたが、同じ頃、雑誌(確か「ムー」)で面白い記事を読みました。

1. それは、小さな港町で、実際に『鳥』のような出来事があった、と言う趣旨の記事でした。
それによると、映画ほどの数ではありませんが、実際に鳥たちが、急に暴れ出した、と言う記事。
人間に被害はなかったのですが、一斉に気が狂ったように、あちらこちらに激突したりしたようです。
原因は、魚に寄生した虫ごと、鳥が食べたの原因と言うことでした。

2. また、この映画で、ティッピ・ヘドレンが、電話ボックスに逃げて、鳥たちの攻撃を受けるシーンがありますよね(イラストで描いたシーンです)。

あれって、個人的な考えですが、「サイコ」のシャワーシーンがとても気に入り、この『鳥』で、再現したかのようなシーンに、僕には見えました。
これって、僕だけ、でしょうかね……。

作品インフォメーション

映画マニアならオススメです。
しかも¥1000以下で買えるなら。
ちなみに僕は、かなり前に¥2400で買いました……。

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パニック

Posted by rockaria