映画『ハメット』ハードボイルド作家の探偵物語は渋すぎる!?

2021年6月17日

ロッカリア
どーも、ロッカリアです。
今日ご紹介する映画は、実在した作家、ダシール・ハメットを主人公にした、ハードボイルド・ミステリーです。
『さらば愛しき女よ』が好きな人なら、この作品も気にいると思います

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男の胸をグッと突く。(当時のキャッチフレーズ)

  • ハードボイルドが好き
  • 渋いミステリーが見たい
  • コッポラとヴェンダースのコラボ作品が気になる

どんな映画?

『ゴッドファーザー』『地獄の黙示録』のフランシス・F・コッポラ監督が制作、『パリ、テキサス』『ベルリン:天使の詩』の名匠ヴィム・ヴェンダースが、それ以前の1982年に作ったハードボイルド・ミステリー。
実在した作家、ダシール・ハメットを主人公に設定し、作家自身が探偵物語を展開し、ハードボイルド作品として仕上げた、ユニークな映画。
舞台設定を、1928年(禁酒法時代)のサンフランシスコ、チャイナタウンにした事で、独特のムードが漂う作品に仕上がっています。

▶︎▶︎▶︎ 小説を書き終えたハメット(フレデリック・フォレスト)は、ピンカートン探偵社時代の相棒ライアン(ピーター・ボイル)から、中国娘のクリスタル・リンを、一緒に探してくれと頼まれる。
ハメットは最初断るが、チャイナタウンに土地勘が無いと言うライアンの言葉に、渋々付き合う事になる。
聞き込みの最中に、ハメットは投函しようと持っていた原稿を無くしてしまう。
しかも、さっきまで一緒だったライアンの姿も見当たらない。
残された手掛かりは、中国娘のクリスタル・リン。
彼女の行方を追うハメットだったが、意外にも、ハメットの事務所に現れる。
これを機に、ハメットは、自身が知らぬ間に、巨大な陰謀に巻き込まれて行ってしまう……。

(↓)こちら、ハードボイルド・ミステリーの傑作です!

見所&解説

チャイナタウン

見所は何と言ってもチャイナタウン。
この街を舞台にしたことで、この探偵物語のムードは一層高まる。
あくまでも推測に過ぎないが、このチャイナタウンは全てセットで、徹底的に作り込まれている。

そりゃダンナ、1928年を舞台にしたんだから、当然セットじゃね?
そう思うかも知れないが、アパートや新聞社の建物、海へと続く川や桟橋、その他モロモロを全てセットで、となると、桁違いに大変な作業になる。(美術さん、ご苦労様)
しかし、この拘りこそがコッポラなのだ。

THE ENDで始まりTHE ENDで終わる

作品の冒頭で、ハメットはタイプライターを打っている。
書き終わると、最後に「THE END」と打って原稿を書き終える。
そして映画の最後、原稿をリライトし終わると、「THE END」と打って、エンドロールが流れて映画が終わる。
この演出は見事だが、どうしても深読みする僕は、一瞬、「ん? この映画自体が、もしかしてハメットが書いた小説だったのか?」と、迷ってしまう。
そんな深読みさせる作品を作るのが、コッポラは得意中の得意なのだ。
その深読みに、まんまと乗せられる僕は、単純に映画バカ(いや、普通にバカ…)なんだなぁと、自分を褒めて上げたいわ……。(褒めるな…)

   余談ですが、
この深読みさせる作品作りは、『ゴッドファーザー』からずっと続いているんですよね。
例えば、その『ゴッドファーザー』の有名な、血の洗礼のシーンも、僕には違って見るんです。(ま、この話はいずれ…)

スケルトンな演出が珍しい

珍しい演出があって、ここも見所です。
タイプライターの下から、タイピングする指を見せたり、床をスケルトン(つまりガラス張り)にして、靴の裏側から、二人の人間の位置関係を見せる。
あんまり見ない演出なので、なるほど〜、と唸ってしまいました。
これもコッポラのこだわりなんでしょうね。
金も出すけど口も出す、タチの悪いプロデューサーなんです!(笑)

小説の主人公

ハメットの書いている小説を、映像として観客に見せるシーンがあります。
面白いのが、その登場人物のモデル。
探偵のオプ役が、ライアンだったり、裏切る怪しい女が、同じアパートに住む友人の女性。
案外、小説に出てくる人物設定なんて、身近な人をモデルにしているのかも知れませんね。

また、小説の舞台が、現実のラストと重なる演出にも、こだわりが見えます。
ヴィム・ヴェンダース監督は、この後の作品、『パリ、テキサス』『ベルリン:天使の詩』などの作風と全く違うので、この作品は、コッポラの意思が、かなり反映されている作品、と言えます。(お金も出すが、口も…)

さて、巨費を投じて作った作品ですが、興行的には大コケ、といっても良いでしょう。
キャストは地味ながら、演技は上手い。
主役のフレデリック・フォレストは、コッポラ組だし、脇役はくせ者のピーター・ボイル。
音楽はボンド映画のジョン・バリーで、セットも凝りまくっていた。
ただ、作品全体が、渋すぎるのだ。
映像もトーンが暗い。
おそらく、女性が見てもピンと来ない、それぐらい渋すぎるのだ。
だから今日、ある意味カルト的な作品になり、一部のマニアにしか受けないようになっている。
これは見て貰えば、、僕の言っている事が、分かってもらえると思います。
かと言って、決してつまらない映画ではありません。
当時のキャッチャーコピーのように、男子諸君の胸には、グッと来るものがあるかも知れません。(いや、きっと来るでしょう)

オープニングで、タイプライターを打つハメット。
その机の上に、電気スタンドが置いてある。
よく見ると、その脚が「鷹」になっている。
そうなんです、映画版『マルタの鷹』に出てくる鷹の像になっているんです。
気付いた時に、思わずニヤッとしてしまいました!

星3

作品インフォメーション

今のところ、ブルーレイかDVDのソフトを買って見るか、TSUTAYAのレンタルぐらいしか見当たりません。

 

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