映画『イルカの日』人間の言葉を理解するイルカに待っている運命…
どーも、ロッカリアです。
1970年代当時、TVの洋画劇場でよく見たこの作品、あのラストは今でも鮮明に憶えています。
当時はSF映画の分野として、語られる事が多かったように思いますが、人間とイルカの愛情物語、とも思えるような気がします。
「イルカが人間の言葉を話す! イルカが〇〇を……」(当時のキャッチフレーズ)
・少し変わったサスペンスが見たい
・言葉を理解するイルカって? と思った人
・ラストシーンに酔いたい
どんな映画?
『卒業』『愛の狩人』の監督マイク・ニコルズが、1973年に名優ジョージ・C・スコットを主演に撮ったサスペンス作品。
イルカが人間の言葉を話す?
そんなバカなと思った人ほど、見て欲しい作品。
僕も最初は「そんなバカな……」と思いましたが、見ているうちに、それが当たり前のように、感じるようになりました。
とても知能が発達したイルカ、一体どんな結末が待っているんでしょうか?
▶︎▶︎▶︎ 海洋動物学者のジェイク(ジョージ・C・スコット)は、フロリダの小さな島の研究施設で、妻のマギーや研究員と共に、イルカに言葉を教える研究を極秘に進めていた。
ところが、研究成果を発表しないジェイクに、資金を提供している財団は不満を持ち始めていた。
そして、成果をこれ以上発表しないなら、資金提供を打ち切ると言い出す。
同じ頃、ジェイクの研究に興味を持った雑誌記者が、島に潜入し、そこで人間の言葉を理解し、話すイルカの存在を知ってしまう。
財団の幹部はジェイクに、目の前で研究発表をさせる事になるが、実はこの財団は、アメリカを揺るがすような、とんでもない計画を企んでいた……。
見所&解説
最初にはっきり言っておきます。
古い作品なので、今見るとテンポが悪い、と感じてしまいます。
しかも、登場する財団の正体もよく分からないし、研究施設に資金提供する意図も分からない。
と言うのも、この財団は、ラストにとんでもない計画を企んでいるが、ジェイクの研究自体、元々は知らなかったからだ。
最初から、あんな計画のために、資金提供していたとは考えにくいし、結構ストーリーには、無理があるように感じてしまいます。
と言って、この映画はつまらんのか? と言うと、そうでもありません。
だから映画には、物語だけでは語れない、不思議な魅力があるんですよね。
ここを見て!
海洋学者のジェイクと、彼の言葉を理解するイルカ(名前はアルファ)が、長い間築き上げて来た絆はとても強い。
ある時は、アルファ自身が、人間の子供のように拗ねたりするし、後から研究施設に来たメスのイルカ、ベータに、アルファが恋した時も、ジェイクは親のようにアルファを見守る。
この絆が、ラストの感動を呼ぶ事になるんです。
また、イルカのアルファは、まるで幼い人間の子供のように、とてもピュアな心を持っているんです。
この、イルカの心を表現した事が、さすがマイク・ニコルズ監督、なのである。
嘘をつかれたと思ったアルフは、「人間、嘘をつく」と言って、見ている人をハッとさせる……。
一度は人間を、そうやって疑うが、ピュアなアルファは、人間の言葉には、素直な心で耳を傾ける……。
オールドファンなら、昔TVで見て、どんな物語か熟知しているでしょうが、あの感動的なラストシーンを覚えていますか?
ましてこの作品を未見の人は、ラストシーンを目にするために、見てもいいんじゃないか、そう思える作品です。
この映画のサントラの話を少し。
僕はアルバム(CD)も、アナログのEP盤も持っています。
実は、最初に買ったのが、CDアルバムの方だったんですが、期待していたものとは違いました。
サントラ自体は、ジョルジュ・ドリューの名作なんですが、僕が聴きたかった、学生時代にラジオから流れていたメイン・テーマじゃなかったんです。
スコアは一緒なんですが、ある効果音が入っていなかたんです。
そう、それはアルファが、パパとママを意味する「パー、マー!」と言う可愛い声!
あれがアルバムの方には、入っていなかったんです。
なので、どうしても欲しかったヴァージョンは、EPアナログ盤にしか収録されておらず、レコや巡りで探し回りました。
ブルーレイとDVDの両方でソフト化されています。
ディスカッション
コメント一覧
いつもこの「銀河シネマガイドブック」を楽しく、また懐かしい思いで拝読させていただいています。
ここで紹介されている映画に接すると、かつて、その映画を観た時の思い出が走馬灯のように蘇ってきます。
映画への限りない愛に満ち溢れ、深い洞察と鋭い切り口のレビューに魅了されています。
今回紹介されているマイク・ニコルズ監督、ジョージ・C・スコット主演の「イルカの日」も、懐かしい映画の1本です。
そこで、この映画についてコメントしたいと思います。
マイク・ニコルズ監督の「イルカの日」は、フランスの作家ロベール・メルルのベストセラーSF小説の映画化で、脚本を「卒業」「キャッチ22」の才人バック・ヘンリー、音楽をフランソワ・トリュフォー監督映画でお馴染みのジョルジュ・ドルリューという魅力的なスタッフが結集していますね。
イルカの言語能力の開発によって、人とイルカという異種間のコミュニケーションに到達しようとする海洋生物学者(反骨の名優ジョージ・C・スコット)の科学的な努力が、南海の澄み切った自然の中で、次第に博士とイルカとの純粋な交流が愛情となって育まれていく前半部が、特に素晴らしかったと思います。
マイク・ニコルズ監督の、人間とイルカに向ける優しい眼差しと瑞々しい感覚に溢れる演出と、また、この映画を担当したジョルジュ・ドルリューの哀愁を帯びて、我々、映画を観る者の心の琴線を震わせる、繊細でリリカルなメロディのテーマ曲が全編に流れ、映画音楽の持つ力の素晴らしさに、しばし映画的魅惑の世界に誘い込まれてしまいます。
特に、アルファ(愛称ファー)とビーという名前の2頭のイルカの演技が素晴らしく、水槽の中を2頭が揃って泳いでいるシーンや水槽の仕切りを飛び越えようとする、あまりにも美しく心を洗われるような流麗な映像は、この映画の白眉とも言える程、鮮烈で見事なシーンだったと思います。
しかし、このイルカを大統領暗殺計画に使おうとする政治的な陰謀が展開する後半は、文明に毒された醜悪な人間との対比で、イルカの純粋無垢な美しさが、我々観る者の胸を打つものの、SF仕立ての安易な冒険物のストーリーに堕してしまったのは、返す返すも残念でなりません。
どうも、製作者側の意図する、動物映画と政治サスペンス映画とSF映画と人間ドラマ映画の観点を全て詰め込もうとするあまり、それぞれが全て中途半端になったように思います。
SFや政治サスペンスという原作の小説の呪縛から解き放たれて、陸と海の、それぞれの哺乳動物の代表である人とイルカのナイーヴな愛情の交流に絞れば、ラストの博士夫妻とイルカたちとの悲しくも切ない別れのシーンが、あまりにも素晴らしく、余韻を残すものだっただけに、もっとこの映画の感動が高まったであろうと惜しまれてなりません。
mirageさん、知的で洗練されたコメントをありがとうございます。
コメント文から、世代も僕と近いのかと、嬉しく思います。(違っていたら、申し訳ありません)
かなり買い被られておられるコメント、恐縮です。(笑)
新しい映画も、なるべく紹介したいのですが、若い時に見た映画の思い出、インパクトがやっぱり心に残っているんですね。
このブログは、僕にとってライフワークと言う感じの位置付けなので、懐かしい映画も、ゆっくりアップしていきたいと思います。
コメントを読ませて頂くかぎり、mirageさんも、かなり映画に精通されておられるようですね。
そう言う方と、映画の話ができるのは、僕にとってもすごく勉強になりますし、何よりも楽しいんです。
僕も同じように感じていました。
大統領暗殺計画を、知能の優れたイルカが実行する。
文字で書くと、とてもサスペンスフルな感じがしますが、この映画の演出としては、成功しているとは言い難いような気がします。
人間とイルカの交流が、あまりにも良く描けているのに、本当に勿体無いと思います。
この辺は、mirageさんと全く同じ意見です。
ただ、逆説的な感じになるかも知れませんが、あのラストによって、僕は色んな事が救われているような気がしました。
ラストが素晴らしいので、また時間を置いて、再見しようと思える映画になっています。
mirageさんの、「ラストの博士夫妻とイルカたちとの悲しくも切ない別れのシーンが、あまりにも素晴らしく、余韻を残すものだっただけに、もっとこの映画の感動が高まったであろうと惜しまれてなりません」
と言う言う気持ちも、痛いほど良く分かります。
この映画をマクロで見た時には、確かにもったいない感じがします。
なんだか、久しぶりに、濃い映画の話(コメント)を読めて、ブログをやっていて良かったと思いました。
また、お暇な時に遊びに来て下さい。
素晴らしいコメント、本当にありがとうございました。