映画『ブレードランナー』SFの名作だがここが変だよデッカード

2021年2月15日

ロッカリア
どーも、ロッカリアです。
今日は多くのSF映画に多大な影響を与えた名作をご紹介。ただ、この映画、一筋縄では行かない、ちょっと変なところがあるんです。
その辺を、新たに作ったコーナーで深堀していきます

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映画『ブレードランナー』予告編(監督のコメントあり)

   こんな人にオススメ!

  • ハードボイルドなSFが見たい
  • 変な所をじっくり検証したい
  • レイチェルに会いたい
  • 一度も見た事がない

どんな映画?

リドリー・スコットが、『エイリアン』の次に制作した1982年のSF作品だが、劇場公開時には大コケした伝説のカルト作品にしてSFの名作。
ところが、ビデオレンタルの普及により、ニューヨークでトレンドとなっていた、カウチポテト族の間で見直され、カルト作品から一気にメジャー作品に昇格した。
「劇場公開版」「インターナショナル版」「デレクターズ・カット版」「ファイナルカット版」など多数のヴァージョンがある珍しい作品だ。

▶︎▶︎▶︎ 宇宙植民地で人間を殺し、地球に逃亡してきた高性能アンドロイドは、レプリカントと呼ばれ、それを破壊するブレードランナーのデッカードは、引退していたが再び任務に着くことを余儀なくされた。
彼は、タイレル社に情報を求めるが、そこにいたレイチェルと言うレプリカントを、人か機械かを判別するVKテストをする事になる。
その結果、彼女もレプリカントであることが分かるが、レイチェル自身はその事を知らなかった。
VKテストを行ったホールデンを殺した、レオンと言うレプリカントが泊まっていたホテルで、大量の写真を見つけると、それを元にゾーラと言うレプリカントの居場所を見つけ、処分に向かうが……。

 

見所&解説

手がかりを頼りにレプリカントの居場所を探す探偵物語

これが作品の構図で、その舞台を未来にした事で(アイザック・アシモフのように)SFハードボイルドが誕生しました。
1982年の「劇場公開版」にはデッカードのナレーションが入っていて、一層ハードボイルド感がありました。
チャンドラーが生み出した、探偵フィリップ・マーロウのように、デッカードは毒舌ではないが、喧嘩に強くない所や、ケガを癒すために酒を飲んだりする描写は、マーロウが元ネタだ。
これはステレオタイプと言うより、チャンドラーがハードボイルドにおける探偵像を、確立してしまった事に起因する、と言った方がいいでしょう。

未見の人にもちょっとだけ予備知識

さて、僕自身もこの映画のファンで、多くのSF映画における未来像を決定付けた名作だと思っていますが、意外に変な箇所が多い作品でもある、と思っています。
その変な箇所は、優に10箇所以上あります。
全部言っては、これから見ようとしている人の興味を削ぐ事になるので、多くのファンが指摘している有名なシーンをちょっとだけ紹介します。
1. 冒頭で、デッカードが食事をするシーン
何かを4つくれと言うと、日本語でオヤジが「二つで充分ですよ、分かってくださいよ」とたしなめるが、何が二つで充分なのか分からない。
長い間、ファンの間でも論争を読んだ話題のシーンだが、2007年に発売された「アルティメット・コレクターズ・エディション」の中に入っていた、「ワークプリント(試写用のフィルム)版」でハッキリとその正体が映っている。
丼の中に、大きなナマズのような得体の知れない食材が二つ……。
一つで充分だと思ったのは、僕だけじゃあるまい。
これはカットして正解だ。(その映像へのリンクを貼っておきます、クリックでYouTubeへ)

2. スピナーを吊り下げるワイヤー
空飛ぶ自動車を演出するために、付けられたワイヤーがしっかり映り込んでいる。
当初、関係者はアンテナだと、苦しい言い訳をしていたが、後にCG処理され消されていました。

3. スピナーのナビゲーション
コクピットに映るナビゲーション映像、これはリドリー・スコットの前作『エイリアン』の使い回しだ。
これは監督も認めている。

4. ミレニアム・ファルコン号!
スピナーが飛び立つと、眼下に広がる高層ビル群……、「ん?」よく見ると、その中に、あのミレニアム・ファルコン号が立っている!

おっと、未見の人ここまで、後はこの作品を見てから、良かったら再訪して下さい。
ここからは、新しい企画がネタバレとして始まります。
名付けて……。

見所&解説〜ダークサイド

名作にケチを付けるような記載になるかも知れませんが、僕如きが多少、変な事を言ったところで、この名作の地位が揺らぐ事もないでしょう。と言うことで、ネタバレで解説していきます。

  1. 冒頭、大きな目のアップ映像があるが、その目に反映する街の景色、特に煙突から出る炎は、瞳の円にしか沿っていない。つまり、白目の部分には何も映っていないのだ。
  2. また、この目は一体誰の目か?
    普通に考えると、ブレードランナーのホールデンがレオンを迎える前に、外の景色を眺めている、そう思うのが妥当だが、その部屋を見ると、窓が刑務所のように上の方にしかなく、脚立か机の上に立たないと外が見られないのだ。
  3. 目玉を専門に作っている中国人のラボ。
    何もかも凍り付いている部屋で、男はかなりの防寒をしているが、アレ? 顔だけは何も付けていないぞ。
    そんな事をしてたら、短時間で、顔が裂傷だらけになるんじゃない……。
  4. デッカードの部屋に、なぜピアノが置いてあるのか?
    彼にピアノなど必要ないはずだ。
    これは後に記するが、デッカードのレプリカント疑惑に関係している。
  5. 探し出したゾーラが逃げ、それをデッカードが背後から撃つ。
    確かゾーラは、素肌に透明のケープを羽織っただけなのに、着弾した時から倒れ込むまで、肌色のスーツ(ババシャツ)のようなものを着用している。
    CGが発達していない当時、素肌に着弾して血が飛び散る演出は、こう言ったアナログでしか演出できなかったんだろうね。
  6. デッカードがレオンと遭遇し、車に投げつけられる。
    フロントガラスに叩きつけられ、そのガラスが割れるが、この時よく見ると、フロントガラスは最初から割れているのだ。
    これは演者の身体を守る、クッションのような役割をしているのだ。
  7. レイチェルが二度目にデッカードの部屋をいる時、彼にこんな事を尋ねる。
    「例のテストだけど、あなたは受けた事があるの?」
    デッカードは寝ていて答えないが、彼女は自分と同類かも知れないと疑い、こんな質問をした可能性が高い。
  8. ジョン・F・セバスチャンが住んでいる廃墟のようなアパートメント。
    その名称が「ブラッドベリ」となっている。
    SFが好きな人なら分かるでしょう。
    原作がフィリップ・K・ディックとくれば、レイ・ブラッドベリも忘れちゃ困る、ってことだよね。

    制作陣のあそび心かな。
  9. そのアパートメントで、ロイとデッカードが闘うシーン。(と言うか鬼ごっこ…)
    デッカードはロイに指の骨を折られる痛いシーンがある。
    ロイは、「これはプリスの分(ボキッ)、これはゾーラの分(ボキッ)…」
    あれ!? レオンの分は?
    レイチェルに撃たれたから、数に入れなかった? ロイはレオンが誰に撃たれたかなんて知らなかったはずだ。
  10. ガフは何故レイチェルを見逃したのか?
    たとえ短い命だと勘違いしても、レプリカントを抹殺するのがブレードランナーの仕事だ。
    でなければデッカードも、わざわざ短い命のレプリカントたちを破壊しに行く必要がなかったのでは?
  11. デッカードの部屋でレイチェルと会話しているシーン。
    よ〜く見ていると、一瞬だけデッカードの目が鈍く光ったように見えた、が、これは僕の思い違いかも知れません。
    再見される人は、よ〜く見て確かめて下さいね。

今度、この作品を見る機会があれば、これらのポイントを踏まえて鑑賞したら、また違った『ブレードランナー』に会えるかも知れませんよ。

人間かレプリカントか? デッカード問題で迷っている人へ

結論から言うと、デッカードはレプリカントだ。(個人的な意見です)
リドリー・スコット監督自身も、事ある度に仄めかしているし、「デンジャラス・デイ」と言うメイキングの中では、わざわざデッカードが、レプリカントだと言う事を示すように、彼の目を赤く光らせているシーンまで作っている。
しかも、1982年の劇場公開版では、デッカード自身がナレーションで、こんな事を言っている。
「何故レプリカントは写真を集めたがる? レイチェルのように記憶が欲しいのか…」
そんなデッカードの部屋にあるピアノの上には、古すぎる写真が山のように置いてある。(そのためのピアノなのだ)
また、ガフはデッカードが見た、夢の中に出てくるユニコーンの折り紙を作っていた。
これは、レイチェルの体験を知っていたデッカードの発言のように、記憶自体が人工的に作られたイメージであることを示唆している。
だが、デッカードは人間かレプリカント、その答えを曖昧にする、見た人が判断することで、作品への興味が尽きないようになっているのが、さすがは名作だと。

ガフが怪しい

個人的な、全くの推測、として以下を読んで下さい。
ガフの手先が器用なことは、小さな紙でも質の高い造形を折ることから分かりますよね。
でも、いくら手先が器用だと言っても、爪楊枝のような、あんな細い物から、指先一つで人間の形(しかもチンチ◯まである…)を作り出すなんて、人間技じゃない!
しかも、杖をついて歩く人間が、ブレードランナーと言う仕事はおかしいし、上司のブライアンはかなりガフの実力を認めていて、デッカードに、「ガフを見習え」とまで言っている。
また、何故ガフは折り紙に執着しているのか?
ラストで、ユニコーンを折り紙で見せるための演出、と見る事も出来るが、折り紙に何か強い思い出(記憶)があって、それに執着している、そう言う見方も出来ないだろうか?
怪しい……。

降り止まぬ雨の意味

制作当時、まだ未来だった2019年のロサンジェルス。
最初から最後まで降り続く酸性雨。
この意味を考えた事がありますか?
もちろん、環境破壊が進んだ未来都市の象徴としている、とは思う。
でも、最後のロイの言葉を聞いた時、僕はこの映画が単にSF映画でない事を知り、胸がいっぱいになった。

   お前たち人間には、信じられないようなものを私は見てきた。オリオン座の近くで燃える宇宙戦艦。タンホイザー・ゲートの近くで暗闇に瞬くCビーム。
そんな思い出も時間と共にやがて消える。
この雨の中の涙のように。
死ぬ時が来た…

作品冒頭から降り続く雨の正体は、自分がどこの誰か?
いつ生まれ、いつ停止するのか?
記憶(思い出)も定かでないレプリカントたちの、悲哀の雨ではなかったのか……。

※ 本日は「ヒッチ先生の【談話室】は長くなったのでお休みします。

作品インフォメーション

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Posted by rockaria