映画『時をかける少女』 大林宣彦監督を偲んで…
今日紹介するのは、今年、映画ファンから惜しまれながら、4月10日に亡くなられた大林宣彦監督、初期の名作を取り上げました
情緒をここまで演出したSF映画は、他にはない!
こんな人にオススメ!
- ジュブナイルって、どう言う意味? と思っている人
- TVドラマ「タイムトラベラー」を知っている人
- 大林監督作品を見て、偲びたい
どんな映画?
原田知世のデビュー作で、1983年の角川映画。
当時、二本立てで公開された「探偵物語」の薬師丸ひろ子を目当てに観に行った人も、原田知世の瑞々しい演技にノックアウトされた人が続出し、話題になった。
尾道三部作の真ん中に位置する作品で、エンディングで歌われる曲は、ユーミンの作詞作曲で56万枚の大ヒットを記録した。
原作は筒井康隆の同名ジュブナイル小説。
▶︎▶︎▶︎ 高一の芳山(原田知世)は、放課後の理科室で掃除をしていた。
隣の部屋に、人の気配を感じた彼女が中に入ると、フラスコがテーブルから落ちて割れ、煙とラベンダーの香りが立ち込め、気絶してしまう。
吾郎(尾美よしのり)と深町(高柳良一)に発見され大事には至らなかった。
ところが、それからと言うもの、芳山は一日を逆行するタイムスリップをしてしまう。
自分の身に何が起こっているのか、不安になったある日、深町に相談してみると、それはタイムトラベルかも知れないと告げられた……。
見所&解説
筒井康隆の原作を読んだ
映画化になる数年前、高校生の頃にジュブナイル小説、NHKの「少年ドラマシリーズ」にハマっていて、眉村卓、小松左京、星新一、光瀬龍たちの小説を読み漁っていた、あの頃だ。
筒井康隆の原作と、映画化された作品では大きく内容が異なっていた。
だが、あくまで個人的な意見と記憶だが、小説よりも映画の方がよりエキサイティングで、面白かった。
作り込まれた風景
予期せぬタイムトラベラーになった少女の不安、二人の青年の間で揺れる純愛物語は、監督の生まれ故郷、尾道で撮影されたが、その情緒たっぷりの演出は、最後まで映画に夢中で、尾道を愛した大林監督のなせる技だ。
よく見ると、C.G.が無かった時代に、主流だったマットペインティングによる合成を使って、建物や背景を構築すると言う念の入れようだ。
映画のムードを作り出す、その為の徹底した意識がそうさせている。
揺れ動く少女の心
中盤までは、幼なじみの吾郎と深町の間で、芳山の心が揺れていた事がわかる。
ところが、ある時点から、深町への愛情が強くなるシーンがある。
つまり、少女から、女として男を好きになる場面も、ちゃんと描くのが大林監督だ。
じゃあ、それはどこだろう?
自分の身に、一体何が起こっているのか、抱えきれなくなった不安を、深町に告げるシーンがそれだ。
つまり、自分の秘密を深町と共有した事によって、二人の繋がりは一層強いものになった。
少し気になる、深町のセリフがある。
彼は言葉を濁したが、芳山と吾郎の未来の関係を示唆する言葉が飛び出すシーンがある。だが、芳山は、それ以上言わないでと静止する。
このシーンが、ラストシーンに関わって来ているので、感の鋭い人は、結構切ない気持ちでラストを迎える事になる……。
うまい!
大林監督の繊細な演出が光るエンディングで、芳山の未来が、タイムスリップした事によって、変わるかも知れない、そんな余韻のあるラストになったんです。
ジュブナイルとは?
単純に、ジュブナイルとは子供向け、ティーンエイジャー向けと言う解釈で間違いない。
でも、60歳近くなった僕は、今でもこの言葉に反応するし、小説や映画を読んだり観ても、充分楽しめる。
人は、誰でも心のどこかで、子供の頃の記憶が残っているものだ。
その記憶に、呼応し反応するから、ジュブナイル作品をこの歳で見ても楽しめるのではないだろうか。
結局、「子供の頃の、不思議な好奇心に訴えかけて来るもの、それをジュブナイル」と解釈したい。
大林監督へ
デビュー作『ハウス』からアルタイムで監督の作品を見て来た一人として、本当に感謝しています。
日本人ならのでは繊細な感性と、遊び心をプラスした作品をたくさん楽しみました。
ありがとうございました。
そして、安らかにお休みください……。
ヒッチ先生の【談話室】〜ちょこっとトリビア
大林監督は、主演の原田知世を天才だと言ってたで。
しかも、「スターが誕生する神話に、今立ち会っている」と絶賛やった
本日も、ありがとうございました
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