映画『波の数だけ抱きしめて』ノスタルジーとは、こう言う事かも知れないなぁ
夏の海より青い青春のドラマは、極上の音楽に後押しされて突き進む！
こんな人にオススメ！
- 夏、海、サーフィンが好き
- AOR が好き
- ミニFM局を知らない人
- この作品、見たことない
どんな映画？
『私をスキーに連れてって』『彼女が水着に着替えたら』『メッセンジャー』と、バブル経済期に大ヒットを生んだホイチョイ・プロダクションが、1991年に中山美穂・織田裕二を主演に作った作品。
冒頭で、中山美穂の結婚式に、友人として織田裕二や松下由樹が出席しているので、織田と中山の恋は実らない事が、最初に観客に知らされる。
▶︎▶︎︎▶︎ 湘南の海辺で、サーフショップ兼ミニFM局でDJをしている田中真理子（中山美穂）は、数日後に両親が待つアメリカに引っ越すことが決まっていた。
同級生の小杉（織田裕二）は、それまでに告白して、真理子の渡米を止めさせようと考えていた。
そこに、浜辺で車をスタックさせてしまった吉岡（別所哲也）が現れ、真理子に一目惚れしてしまい、妙な三角関係に発展してしまう。
小杉は、同じく同級生の芹沢と裕子（松下由樹）たちと、200メートルごとにトランスミッターを配置して、湘南中にFM局の電波を飛ばそうと頑張っていた。
それを知った吉岡も、仲間に入れてくれと強引に参加したことから、ますます真理子と小杉の関係は微妙になって行く……。
ミポリン祈りのポーズ！
見所＆解説
見所はズバリ、ミポリンのDJ 姿！
夏、海、サーフィン、音楽、ミニFM局、そして恋愛。
見事に溶け合って、どこかに共感する部分が、誰にでもあるんじゃないでしょうか。
あるいは、こんな青春に憧れた、という人もいるんじゃないでしょうか。
プロローグで、真理子は他の男と結婚してしまうので、小杉や吉岡の恋は、どうして終わってしまったのか、その一部始終を見せられる事になるが、その見せ方が上手い！
真理子がアメリカに行くと言うタイムリミット、その真理子に、小杉が過去に告白し、断られた理由など、ちょっとしたタイミングのズレを、青春あるあるとして、巧みに見せてくれる。
音楽をユーミンが担当して、劇中で４曲が聴けるのも楽しみだが、この映画は音楽に関してとんでもない事をやってのけた。
舞台の1982年当時、一大ブームになっていたAOR（アダルト・オリエンテッド・ロック）が大胆にフューチャーされているのだ。
サーファーに愛されたカラパナや、アメリカ西海岸のアーティスト、J.D.サウザー、TOTO、ジェームス・テイラー、カーラ・ボノフたちの名曲ががっつり聴ける。
中でも、バーティ・ヒギンズ の「カサブランカ」と、J.D.サウザーの「ユア・オンリー・ロンリー」が流れるシーンは、画とマッチして、主人公たちの心情が伝わってくる。
DJ姿の中山美穂は、実にイキイキしていて、ああ、こんなFM局が本当にあればいのに、と思わせてくれる。
ターンテーブルや、カセット、オープンデッキ、ミキサーの取り扱い方が、実にらしい。
トランスミッターを200メーターごとに設置して、電波をリレー式に繋いで行こうとするが、どれか一つでも不具合を起こすと、電波は途中で途切れてしまう。この危うさ、モロさが、作品のメタファーとしても感じられます。
真理子と小杉の恋愛物語に始まるが、最後まで見ると、青春の1ページを共に過ごした仲間との、友情物語である事も分かる。
そして、青春時代は、ひと夏の経験のように、すぐに過ぎ去って行くものなんだと言う事を、改めて感じさせられます。（今頃感じても、しょうがないんだけどね）
○○○＋○ エキストラボール
● タワーレコードに、レコード買いに行くシーンがある。当時タワレコは、輸入レコード専門店だった。
輸入盤はシュリンク・パッケージで、真理子と裕子が開封して中の匂いを嗅ぐシーンがる。
そう言えば、独特の匂いがして、僕もその匂いを嗅いだ覚えがある。そして、これがアメリカの匂いかぁ〜、などと友達と話した事を思い出す。
● 吉岡が乗っている車、フォルクスワーゲンのビートル。
色は定番の黄色で、人気があったが、実はサーファーの間では、カリフォルニア・ブルーと言う淡い青色が、アメリカや日本で愛されていた。
● 真理子がFM局でレコードを取り出し、それに向かってスプレーを吹きかけるが、若い人には何をかけているのか不思議に見えるらしい。これは、レコードの素材がビニールで出来ているため、静電気が発生しやすく、それを除去するためにスプレーしているのだ。
それにしても、劇中のミポリン、それはちょっと振りすぎだって……。
● この映画にインスパイアされて、当時ニュース・キャスターだった木村太郎氏は、葉山にコミュニティFM局、「Shounan Beach FM」を開局した。
話題を集めたが、関西在住の僕は聞くことが出来なかった。
現在もちゃんと運営されていて、今は関西どころか、全国で聞くことができる。
え？ そんなにトランスミッターを繋げたのかですって？ ネットですよネット。
だからこそ、この映画にはノスタルジーがあるんです。
「Shounan Beach FM」は、こちらから聞くことが出来ます。