映画『コンドル』(1975)サスペンスの傑作を見逃すな!
どーも、ロッカリアです。
本日ご紹介する映画は、1970年代サスペンス映画の名作です。
巻き込まれ方サスペンスを数多く生み出したヒッチ先生の映画とは、一味も二味も違う作品に仕上がっていて、最後まで目が離せませんよ。
ニューヨークの真っ只中を襲った戦慄のワシントン司令!
全米恐怖の巨大組織CIAに挑む華麗なる男<コンドル>!(キャッチフレーズ)
・強烈で硬派なサスペンスが見たい
・CIAの秘密に興味がある
・サスペンスの中にもロマンスが見たい
・70年代の映画に興味がある
どんな映画?
社会派の監督シドニー・ポラックが、CIAの内部に切り込んだサスペンスの名作。
主演のロバート・レッドフォードは、当時、押しも押されぬドル箱スター。
人気女優のフェイ・ダナウェイと初共演したインパクトも凄いが、何と言っても二人のラブ・シーンが話題になりました。
理由も分からずに、味方の組織から命を狙われ、書籍から得た知識を駆使して戦うコンドルと、彼を執拗に追いかける、プロの殺し屋との戦いはスリル満点。
なぜ、コンドルは命を狙われたのか? 最後まで見ても、少し分かりにくかった人もいるはず。
その辺りも、ダークサイド(ネタバレ)で解説しています。
▶︎▶︎▶︎ ニューヨークにあるアメリカ文学誌協会、実はCIA組織の一部だが、世界中の書籍や雑誌を分析し、情報を収集するだけの組織。
この日も、ランチ当番のターナー(ロバート・レッドフォード)は、みんなのランチの買い出しに、雨の中、裏口から出て行った。
それと入れ替わるように、入り口から銃を持った男たちが中に入り、協会のメンバーを次々に射殺した。
ターナーが戻り、悲惨な現場に驚いた彼は、外の公衆電話から本部に連絡、保護を求めた。
ビルの路地裏で保護すると言われ、現場に向かうが、保護に来たはずの人物は、いきなり銃で撃ってきた。
誰も信じられないターナーは、コードネーム「コンドル」として、殺し屋たちから逃れ、組織に立ち向かって行くが……。
見所&解説
サスペンスの名作!
今見ても、色褪せないサスペンスの名作。
当時、不透明な組織だったCIAに切り込んだ、シドニー・ポラックの意欲作で、のちに、この映画から派生したかのように、オイルショックを予言しているのがすごい。
見所は多い
冒頭で、文学史協会の職員が、45口径のイングラムMサブマシンガンで皆殺しにされるシーン。
その手口で、明らかにプロの殺し屋が絡んでいると観客に伝える。
本を読んで分析するのが仕事のコンドルだが、戦いや実戦には全くの素人。
その彼が、殺し屋から逃れるシーン、組織に反撃するシーンは、素人ながらも、書籍から得た知識を活かしていて、このアイデアが面白い。
そして、なぜ命を狙われているのか、本人も分からない設定が、観客を、コンドルと共に、最後まで行動させる。
公開当時、話題になったのが、レッドフォードとフェイ・ダナウェイの初共演だ。
レッドフォードは『明日に向かって撃て』『スティング』などで、すでに大スターであり、フェイ・ダナウェイは、『俺たちに明日はない』『華麗なる賭け』『チャイナタウン』等で、存在感のある女性を演じていた。
人質として、コンドルに怯えながらも、芯が強い女性を演じ、この作品でも印象に残る演技を見せてくれた。
音楽がいい!
映画のサウンドトラックを、ジャズ畑のデイブ・グルーシンが担当している。
一度聴いたら忘れられないメイン・テーマを中心に、印象深い音楽を構築している。
僕も、当時ドーナツ盤を買ったが、何年か前にこの映画を見直した時に、どうしてもアルバムが欲しくなり、スペイン盤を手に入れました。
昔の映画って、、音楽を聴くのも映画を見る楽しみの一つだったね。
身頃&解説〜ダークサイド
さて、ここからはネタバレ解説で、ちょっと分かりにくかった、なぜコンドルは命を狙われたのか、を整理しておきたいと思います。
未見の人は、作品を楽しんでから読んでくださいね。
コンドルことターナーは、世界のあらゆる書籍から、色んな可能性を分析して、自分なりのレポートを提出していた。(それが仕事の一環だから)
そのレポートの内容と言うのが、「CIAの組織の中に、幹部も知らない、別の秘密組織が存在する可能性がある」と言うものだった。
もちろん、これは書籍を分析した、なんの意味も確証もない無い、ただのレポート(事務的な)だった。
しかし、ターナーのこのレポートは、その秘密の組織が実際に存在し、そのメンバーが察知、上層部に知れる前に、レポートと共にターナーを消し、何事も無かったようにする、それがこの事件の真相。
ターナーにしてみれば、まさか自分の書いたレポートが、真実を突いていたなんて、夢にも思っていない。
しかも、ターナーを狙うのは、フリーランスの殺し屋、上層部も、何が起こっているのか、把握していない状況で、物語が進んで行ったのです。
この、謎を謎が呼ぶ展開が、この作品を一級のサスペンスに仕上げているんです。
ストックホルム症候群
リアルタイムで見た時は、人質になったフェイ・ダナウェイが、どうして犯人のターナーに協力的になれるのか理解出来なかった。
確かに、レッドフォード演じるターナーは魅力的な男性で、物語の展開上、そうせざるを得なかった、と言う脚本上の理屈はわかる。
でも、きっと現実は違うよなぁ……、と長い間思っていた。
ところが後年、「ストックホルム症候群」と言うワードを知り、人質が実際に、犯人側と心理的なつながりを構築し、好意を持ってしまうことが稀にある、と言うことを知った。(様々な解釈もあります)
これは、実際に、スウェーデンのストックホルムで起きた事件に由来しているみたいです。
ディスカッション
コメント一覧
1970年代に人気の絶頂を迎えたロバート・レッドフォードを、こよなく愛しています。
彼の出演作は、ほとんど観ていると思います。
そんな彼の出演作で、特に好きな10本を挙げるとすれば、「コンドル」「明日に向って撃て!」「大統領の陰謀」「候補者ビル・マッケイ」「追憶」「ブルベイカー」「愛と哀しみの果て」「裸足で散歩」「華麗なるギャツビー」「スティング」となります。
そこで、1970年代の社会派サスペンス映画の秀作「コンドル」について、コメントしたいと思います。
“巻き込まれ型のポリティカル・スリラーで社会派サスペンス映画の秀作「コンドル」”
「コンドル」は、ジェイムズ・グレイディ原作の「コンドルの六日間」をシドニー・ポラック監督、ロバート・レッドフォード主演の黄金コンビで映画化したもので、製作が「マンディンゴ」(リチャード・フライシャー監督)「セルピコ」(シドニー・ルメット監督)等のイタリア出身の大物プロデューサーのディノ・デ・ラウレンティス、撮影監督が「フレンチコネクション」「エクソシスト」(ウィリアム・フリードキン監督)等のクールなローアングルでの撮影を得意とするオーウェン・ロイズマン、音楽をシドニー・ポラック監督作品の常連でグルービーなジャズを基調とした、乾いたクールなサウンドが抜群のデイヴ・グルーシンという最高に素敵なメンバーで製作された、”ポリティカル・スリラーで尚且つ社会派サスペンスの秀作”です。
とにかく、”着想の抜群の面白さ”、”緊密なシナリオの構成”、”テーマの優れて政治的な奥行きの深さ”、”演出のシャープなダイナミズム”、”出演俳優の静かで深みのある演技”と、そのどれをとっても申し分のない出来の優れたポリティカル・スリラーで、この映画がその後の幾多の巻き込まれ型のスパイ逃亡劇の原型になったのも頷けます。
マーベル・シネマティック・ユニバース製作のジャンルとしてのアメコミ映画の最高傑作と言われている「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」(アンソニー・ルッソ/ジョー・ルッソ監督)の原型となったのが、この映画「コンドル」であるのは周知の事実です。
マーベル・シネマティック・ユニバースの総帥で大製作者のケヴィン・ファイギも、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」は、1970年代の当時のウォーターゲート事件を下敷きにした、ポリティカル・スリラーの傑作である「コンドル」へのリスペクトとオマージュを捧げた映画であると語っています。
そして「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」というアメコミ映画でありながら、優れたポリティカル・スリラーの傑作でもあるこの映画に、ロバート・レッドフォードを担ぎ出したケヴィン・ファイギの深慮遠謀の狙いもあった訳です。
映画のオープニングの寒々とした雨のニューヨークの昼どきに、”アメリカ文学史協会”と看板のかかった小さなオフィスに二人の男が現れ、中にいた6人の男女を射殺するというショッキングなシーンにまず圧倒されます。
このシーンでのシドニー・ポラック監督のクールで無機質的なタッチの演出が冴え渡ります。
オーウェン・ロイズマンの撮影も観る者に有無をも言わせぬ、背筋が凍るような心理的な恐怖を体感させます。
その時、たまたま昼食を買いに外出していた主人公のコードネームが、”コンドル”のジョセフ・ターナー(ロバート・レッドフォード)は戻って来て、そのあまりに無残な惨状に愕然とします。
“誰が何のために、なぜ?” そして彼は身の危険を感じ、そのまま逃亡し、追われながら真犯人をつきとめようと必死の反撃に打って出ます。
リベラルな政治思想の持主で、「候補者ビル・マッケイ」や「大統領の陰謀」等の政治・社会派の映画に積極的に出演するロバート・レッドフォードは、この娯楽映画という衣装を纏ってはいますが、政治的なメッセージの含まれる「コンドル」へなぜ出演したかという意図が明確にわかります。
“アメリカ文学史協会”は、CIAの最下部の組織で、世界中の雑誌、書籍等を読んではデータを収集・分析するのが仕事でした。
コードネーム”コンドル”のターナーは、逃げ回るうちに、虐殺を行なったのが、CIA自体そのものであったという事実に気付きます。
“聖域であるはずのCIAの闇の部分に踏み込んだ最初の映画”とも言える「コンドル」が製作出来たのは、やはり当時のウォーターゲート事件によって政治やCIA等への信頼が大きく揺らいでいた状況を反映していたものと思われます。
映画というものが”時代を写す合わせ鏡である”と言われる所以は、まさにここにあると思います。
CIAがなぜ組織の末端にすぎない”アメリカ文学史協会”のメンバーを組織ごと殲滅するような暴挙に出たのか?
それはターナーが作成した文書が原因で、その内容が”CIAのある部分の組織が中東での石油絡みの謀略に関する極秘計画”に合致していたからでした。
この計画を感づかれたと思った”組織内のある人物”が、独断で外部の殺し屋(マックス・フォン・シドー)に抹殺指令を出していたのです。
この殺し屋を演じるマックス・フォン・シドーの不気味で冷徹でクールな殺し屋像は、その存在感で観る者を圧倒します。
この映画で面白いのは、ターナーが逃げ回りながら孤独な闘いに挑み、見えない敵に対して反撃に出る訳ですが、彼は推理小説や冒険小説を読むのが仕事のCIA職員なので、その読んだ知識を最大限に活用して、電話の逆探知に成功したりして殺し屋を翻弄していきます。
この本で得た知識でアマチュアがプロに勝つという設定が、実に楽しく、観ていてハラハラ、ドキドキの連続です。
全編を覆うデイヴ・グルーシンの都会的で乾いたクールなタッチのグルービーなサウンドが、いつまでも耳に残り、シドニー・ポラック監督とロバート・レッドフォード主演のコンビの映画では、この知的でクールなポリティカル・スリラーの「コンドル」が個人的には最も好きな映画ですね。
コメントありがとうございます。
デイブ・グルーシンの音楽はホント良いですよね〜。
サントラCDは今でもたまに聴きます。
『名探偵登場』や『天国から来たチャンピオン』も忘れられません。
社会派のシドーニー・ポラックの本作、ニューヨーク・タイムス社の前で交わされる会話に、とても震撼させられました。
この作品がスリラーとしても語られるのは、このラストがあってこそ、と思えます。
レッドフォード作品で好きなのは、mirageさんが挙げられた作品に、監督主演した『モンタナの風に抱かれて』をプラスしたいですね。
今回も思慮深いコメントを読ませて頂き、僕はある事を感じました。
mirageさんは、ご自身でブログなど立ち上げておられないのですか?
もしブログをされていないのでしたら、是非、ご自身のブログを作って、豊富な映画知識を生かしてみてはどうでしょうか?
コメントを読ませて頂き、僕の浅はかな知識による記事よりも、よっぽど面白いと思いましたよ。
僕のブログに対する姿勢は、紹介した映画を、楽しんで貰えるようにガイドしています。
mirageさんなら、限定されるかも知れませんが、映画通向けに、かなり専門的な解説が成立するんじゃないかと、コメントを拝して思いました。
僕なんか、コメント読んで、全部コピペして記事にしようか! と(冗談ですけど)そこまで思いましたよ。
mirageさんの専門的なスタイルのブログがもしあれば、間違いなく、僕は熱心な読者になりますよ。
もし、既にブログをやっておられたらお詫びします。(やっておられるなら、ブログ名を教えて下さい)
今回も濃い(笑)内容のブログありがとうございました。
また遊びに来て下さい。
ご丁寧な返信、誠にありがとうございます。
コメントの中にありました、ブログの件ですが、立ち上げていません。
あくまでも、個人的に映画を楽しもうというスタンスで、映画に接していまして、とてもとてもブログなど無理だと思っています。
この世で一番好きな映画を観て、徒然なるままに、他の映画を愛する方が書かれている、素敵なブログを見て、コメントさせていただく、というスタンスです。
今後もこのブログに、私の好きな作品がありましたら、コメントさせていただきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願い致します。
そうですか〜。
映画に対する愛情は、コメントにも充分滲み出ています。
勿体無い気がしますが、mirageがそう言うスタンスなら、僕は何も言うことはありません。
出過ぎた事を言いまして、申し訳ありませんでした。
それを踏まえた上で、また遊びに来て下さい。
僕も、mirageさんには及びませんが、楽しく、自分なりにこのブログを続けて行きます。
なにせ、ライフワークだと勝手に決めてやっていますから。
こちらこそ、よろしくお願いします。