『マチネー/土曜の午後はキッスで始まる』核戦争、蟻人間、そして映画愛
キューバ危機に一番近い映画館は、映画へのオマージュでいっぱい!
こんな人にオススメ!
- 映画へのオマージュがある作品が好き
- ジョー・ダンテ監督作品は外せない
- コミカルだけど、サスペンスもある映画が見たい
どんな映画?
1993年に作られた映画だが、舞台を1962年のアメリカ、キー・ウェストの街に設定し、核戦争が起こる直前のキューバ危機と、映画館に集う人々の生活をコミカルに描いた、知る人ぞ知る秀作だ。
▶︎▶︎▶︎ 海軍に勤めるお父さんの都合で、キー・ウェストにやって来た少年ジーンは、新作映画『MANT!』のプレミアム上映のためにやって来た、恐怖映画の神様、ウールジーと知り合い、準備の手伝いをする。
そのジーンは、ちょっと変わった女の子、サンドラと一緒に映画を観ることになった。
その映画館には、ウールジーが仕掛けた特殊効果があって、映画館は滅茶苦茶になる始末。
蟻人間に扮した不良のせいで、ジーンとサンドラは、劇場マネージャーが作った核シェルターに閉じ込められてしまう。
その時、シェルターの外で大爆発が起こり、二人は核戦争が始まったと確信して……。
劇中映画『MANT!』に出てくる蟻人間!
見所&解説
見所はズバリ、映画愛にあふれた演出!
劇中映画『MANT!』はモロ『蝿男の恐怖』(1958)のパロディで、この映画を監督するウールジーは、ヒッチコック先生のパクリ。
この映画のオープニングも、TVの「ヒッチコック劇場」風で始まり、途中、サインを求められる時に、「ヒッチコックだろ?」と言われる。
この映画を最初見た時は、劇場が滅茶苦茶になる事を、単にキューバ危機に絡めた演出だと思っていた。
ところが、今回は、ちょっと違うんじゃないか、と言う一面が見えて来た。
設定は1962年だが、実際に作られたのは1993年。
すでに、『大地震』のセンサラウンド方式や、『サスペリア』のサーカム・サウンドと言うのが作られていて、『MANT!』で音響効果を強調していたが、その他にも座席にも仕掛けがあったりと、現代にも通じる、劇場のアミューズメント・パーク化を皮肉っているのでは? と思えて仕方がない。
その根拠が、キューバ危機を背景にしている事だ。
人類最悪のテクノロジーを引き合いに出し、科学の進歩は、決して良いものばかりでは無い、と言うメッセージが込められているように思えて来た。
もちろん、こんなことは考え過ぎだろうが、僕はどうしても、最近話題になった、マーチン・スコセッシ監督の「映画のアミューズメント化」と言う発言と、妙にシンクロしてしまうからだ。
観客を、いかに映画の世界観に引き込むのか、ジョー・ダンテ監督は、自身の哲学に基づいて、皮肉っているんじゃないだろうか。
映画は、暗闇の中で一人、没入感を味わいたいと思う僕は、歳のせいだけじゃ無いと思うのだが……。
ヒッチ先生の【談話室】
お前知ってるか?
あの映画、一切音楽を使って無いのを?
こう見えても、自称ヒッチコキアンですよ。
あ、そう言えば、今日の作品のテーマに、ちょっと関係があるかも知れませんね。
映画の世界感に、いかにして没入するか
プロデューサーの顔色ばかり見とらんと、観客の驚く顔を想像して映画を作れ、と言いたいな
先生、この映画のおすすめ度は?
☆☆☆☆!
見て損はせん!
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